パンデミックの前にリノベーションが始まり、海外渡航がまだ難しかった2019年にリニューアルが完了したチバソムへやっと行くことができたのは2024年夏でした。報告が半年遅れですが、7年ぶりに滞在したチバソムの新しい顔をご紹介します。チバソムでは自室以外の場所でのカメラ、携帯、パソコンなどの電子機器の使用が禁止されているデジタルデトックスルールがあるので、許可を得て無人の時間帯に撮影したiPhoneでの写真を使います。
2025年に輝かしい30周年を迎えるチバソムは、言わずと知れた、ウェルネスのサンクチュアリ。健康の維持や向上を目指して世界中から人々が集まる。リピート率が50%を超えるスーパー・ウェルネスリゾートだ。3泊以上の目的別リトリートプログラムは、今や16種類に及び、コロナ禍に追加された免疫向上(レジリエンス)、腸ヘルス、エイジング・ウェル(不老長寿を目指す)などはまさに世の中のニーズに対応している。今更だが、チバソムの料金体系はリトリートプログラムの種類で金額が変わるのではなく、シーズン、部屋タイプ、宿泊日数で金額が決まり、コンサルテーション、施術、食事、毎時自由に参加できるアクティビティーへの参加が全て含まれるオールインクルーシブだ。
私の7年ぶりの体験は5泊6日で、5泊から受けられるアート・オブ・デトックス(腸内洗浄も含む本格的なデトックス)プログラムに惹かれつつ、腸内フローラを増やせそうな腸ヘルス・プログラムとその特別食、腸ヒーリングメニューにも興味があり、さらに過去2年間の間に体重が5キロも増えてしまい着れない服が多数ある悩みや、時々現れる腰痛も相談することにした。ハッシー、こと鍼灸師、橋本氏の鍼灸も絶対受けたいことも忘れずに伝え、コンサルテーションを終えたところ、自然療法士のアドバイザーが組んでくれたのは、ナチュラル・リニューアルというリトリートプログラムを基本にモディファイされたもの。まさにテイラーメイドのプログラムが出来上がった。デトックス効果や腸ヘルス、腰痛予防に効くマッサージ、総合的に私に推奨するアクティビティー(ピラティスなど)、そして鍼灸が含まれる多彩な日程で、腸ヘルス・プログラムに含まれる特別食は1日だけ体験してみることに。ゲストの希望をしっかり叶えつつ、お悩み解決に導くための施術やアクティビィティーで構成されるスケジュールが出来上がっていくことを実感した。
一つ一つの施術の説明や感想は割愛するが、ともかく色々な施術とアクティビティーが組まれた。施術師も鍼灸師もフィットネスのトレイナーも、私からの希望やお悩みを理解しているので、それぞれの専門知識を駆使し、良きアドバイスもくださる。私が色々な希望を言いすぎた結果だが、効果が期待できる施術やフィットネス(運動)もアドバイスも、多岐に渡りすぎて自分が何を一番必要としているのかわからなくなってしまった。つまり、シンプルにリトリートプログラムを決めて、そこに含まれる内容に専念する方がベターなのかも、ということ。ちょっと気になる施術を(今回、オプショナルでアンチエイジングのフェイシャルを体験)いくつか追加するぐらいが良さそう。チバソムのテイラーメイドぶりが確認できたのはよかったが、欲張りすぎはよろしくなかった。7年ぶりの滞在に舞い上がり、ちょっと失敗だった、の巻。 ちなみに体重増加問題はほとんどスルーされた感じだった。世界中のゲストの減量(しかもシリアスなケース多数)に対応しているチバソムスタッフにしてみたら、現在の私の体重は問題視する必要がないと思った模様。過去の記録が全て保存されているので、実際に体重が増えていることは知ってのことだが。
リノベーション後、白と木目を基調とした明るい客室に生まれ変わったオーシャンビルの客室も初の体験。今回宿泊したオーシャン・デラックス・ルームは、ウォークインクローゼットとバスルーム、特に洗面所を巧みに組み合わせた造りは使い勝手が良く、機能性と快適性を兼ね供えていた。48m2よりもはるかに広く感じるレイアウトだ。タイ・パビリオンを見学させてもらったが、以前よりかなり広い66m2の広さとなり、オーシャンサイド同様にぐっと明るくなり、さらにテラスも備え、アップグレードされた感が強かった。ウォッシュトイレのシステムがオーシャン・デラックス・ルームのものよりかなり上のグレードで、次回はタイ・パビリオンだな、と心の中でツイートした。
さて、チバソムのウェルネス・キュイジーヌはCuisine as medicineをコンセプトとする。あえて日本語にするなら 医食同源、つまり食餌療法の実践や免疫効果が高い食事でウェルネス効果を得ることを目指す食だ。オールデイダイニングのTaste of Siam は、以前はビーチフロントの屋外レストランでエアコンがなかったのだが、外のテラス席を残しつつ、レストラン自体はエアコン完備に変身していた。朝とランチは今まで通りビュッフェと、メインだけオーダーするスタイルが継続していたが、夕食メニューが完全アラカルトに代わっていたので驚いた。しかも、スープやサラダ、もちろんメインもかなりのチョイスが用意されており、2週間以上のロングステイ・ゲストも飽きずに夕食を楽しめるメニューだった。カロリー制限などない方は、スープ2種、メインも2種、みたいなセレクトも可能だ。各ポーションがかなり小降りであることはお伝えしておく。チバソムでは油や塩を調理に使わない、薬味に塩は含まれない、白糖は一切使用しないなど色々なルールがあることは以前から知っていたが、久しぶりのチバソムでは、変わっている部分も色々あった。オーダーした食事がサーブされる前に、テーブルに岩塩とブラックペッパーがさっと運ばれる。「おー、塩はOKになったのか」、とニンマリ。食事制限がないゲストに限ってのサービスだが、おそらくゲストからの声を反映させた柔軟性の結果だろう。
新しいリトリートプログラムの一つ腸ヘルスに含まれる腸ヒーリングメニューを1日だけ3食体験した。ベジタリアンかノンベジタリアンからチョイスし、腸の健康に良いメニューが供される。腸内をきれいにしやすい少量の食事がメインで、朝は飲み物主体、昼はギャバライスとタイのカレー(極めてマイルドな味)、夜はサーモンの味噌照り焼きだった。知識として腸を癒すメニューがどんなものか知りたかったので体験してよかったが、基本的に食事制限がない私としては、ワイン(お酒はオールインクルーシブに含まれないので有料)を飲みつつ、サラダ2品やメイン2品のコースが満足コースだった。
加えて、私が滞在した時は一部のリノベーションでクローズしていたエメラルドルーム(レストラン)の新メニューを試食した。エメラルドルームは以前はエアコン完備のオールデイダイニングだったが、リノベーション後、ファインダイニングレストランに変わり、ディナーだけを提供している。新メニューは中国スタイルの鍋料理で、ココナッツウォーターで具材を煮るしゃぶしゃぶ風。ただし、鶏肉と野菜というヘルシー具材だ。タイのチリを含む数種類のタレが用意されていた。その時点ではあくまで試食だったので、是非とも日本のポン酢もタレの一つに加えてほしい、と料理長に依頼してみたが、最終的にどのような鍋料理メニューになったのかわからない。次回の滞在時のお楽しみとしよう。
蛇足だが、今回敷地内に喫煙スペースが復活していたので驚いた。ウェルネスリゾートとして喫煙は決して推奨しないし、禁煙のための施術もあるぐらいだが、ここ5−6年の間にゲストのポートフォリオが広がり、特に喫煙者の多いアジアや中東の国々からのゲストが増えているので、ニーズがあったということだろう。テイストオブサイアムのテラス席のさらに奥のエリアにひっそりと隠れるようにテーブル、椅子と灰皿が置かれていた。そういえば、カタールの姉妹リゾート、Zulal Wellness Resort by Chiva-Somにも決して小さくない喫煙コーナーがあると聞いている。世の中のトレンドは圧倒的に禁煙に向いているので、ちょっと不思議な現象も見えた、新しいチバソムだった。