世界に 9 つのラグジュアリーホテルを所有するドーチェスターコレクションのパリのホテル、 ル・ムーリスは、時代を超えて、世界の王侯貴族と芸術家に愛されてきました。2020 年の 2 月 27 日から 3 月 6 日に日比谷シアタークリエで再演される「女王がいた客室」は、まさ にル・ムーリスがインスピレーションの元となった、人気劇作家藤沢文翁が原作・脚本・演 出を手がける音楽朗読劇です。「VOICARION(ヴォイサリオン)」と冠したこのプレミア 音楽朗読劇は、演劇界・声優界の人気実力派キャストが参加する極上の舞台です。このよう にル・ムーリスは、時代を超え、国を超え、多くの貴族たちの休息の場、芸術家たちのイン スピレーションの場となってきました。

本当だよ・・・ このホテルの従業員は皆、ロマノフ王朝の生き残りなんだ

嘘じゃないよ! パリへ亡命してきた貴族達なんだ・・・

ポーターは伯爵家執事 フロントクラークは男爵 包丁を磨いているシェフは近衛連隊長なのさ 嘘だと思うなら、コンシェルジュにぶつかってみなよ

きっと馬鹿に礼儀正しくお辞儀をするはずさ・・・・

20 世紀初頭のパリを舞台に、 ロマノフ王朝最後の生き残りとなった貴族たちが織り成すヒューマンドラマ。

それは、アナタがきっと宿泊したくなるホテル。

『女王がいた客室』より

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この度、東京日比谷のシアタークリエで上演される『女王がいた客室』は、人気劇作家の藤沢文 翁がル・ムーリスで作品の着想を得てホテルの客室で執筆しました。舞台設定は 20 世紀初頭の パリ、架空のホテル・バッサーノですが、パリの歴史と共に歩んできたル・ムーリスは、劇中の ロマノフ王朝の女王を迎えるホテルに相応しい壮麗さと気品を感じさせます。

『パリは僕が青春を過ごした場所であり、いつ訪れても変わらないその歴史ある町並みには、僕 の様々な思い出が焼き付いています。それは僕だけではなく、パリという街が、あるいはこの ル・ムーリスが、様々な人々の思い出を優しく包み込む空間のように感じられます。変わりゆく 世界で、変わらない場所があるということが、どれほどの安らぎを人々に与えることでしょう。 新作を書くため、このル・ムーリスという変わらない空間を訪れた時、幼い頃、廊下を走って怒 られる自分の面影に出会いました。たった一瞬ですが、あの頃の悪戯な自分の心が蘇りました。 老舗のホテルとは、本来そういうものなのかもしれません。宿泊する夜、今の自分とも向き合え ますが、過去の自分とも対面できるのです。そんな時、思いついたのがこの物語です。ロシアの 亡命貴族がたった一晩だけ、貴族に戻れるという、この物語を・・・。』

劇作家の藤沢文翁より

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ホテル ル・ムーリスは、パリ中心部、チュイルリー公園前に位置する、1835 年創業の老舗ホテ ルです。パリの五つ星以上のホテルに与えられる「パラスホテル」の称号を保持する現代の宮殿 ホテルです。始まりは、ノルマンディーの港町カレー。ここで旅宿を営んでいたシャルル=オー ギュスタン・ムーリスは、ドーバー海峡を渡り、立ち寄る英国の紳士淑女達が「どんな要望にも 応えてくれる最高級ホテルがパリに無い」と嘆く声を耳にします。それならば、ロンドン以上に 洗練されたホテルを!という想いを抱き、パリにホテルを開業します。英語が流暢なバトラー に、両替のシステム、全室にバスタブを完備、コンシエルジュやルームサービスを開始し、伝統 美を誇る内装に値する上質なサービスを提供し始めます。

2 世紀に渡り、ヴィクトリア女王からナポレオン 3 世、モンテネグロの国王、プリンス・オブ・ ウェールズ、イギリス国王ジョージ 6 世、ザンジバールのスルタン、ジャイプールのマハラジ ャ、ロシアの大公妃が常連となります。20 世紀には、まるでパリの小さなヴェルサイユ宮殿、 ホテル・デ・ロワ(Hotel des Rois)=「王侯貴族のホテル」」と讚えられます。今でもホテルの 紋章には王冠が誇らし気に輝いています。

ロシア革命でロマノフ王朝が滅亡した 1917 年後、ロシアから多くの亡命者を受け入れたパリ は、「狂騒の 20 年時代」に突入します。第一次世界大戦の痛みを忘れ、平和を謳歌しようと、 パリ文化は華やぎます。新聞広告には、上流階級の顧客達がパリの魅惑的な夜景を臨むル・ムー リスの屋上テラスで、ディナーやダンスを楽しんでいる様子が描かれています。ソーシャライツ や芸術家、実業家や詩人が集う社交場としてカフェ・ソサエティが流行り、亡命ロシア貴族によ るファッションブランドも設立されます。ディアギレフ率いるバレエ・リュスと呼ばれるロシア バレエ団は、エキゾチックな衣装と高い芸術性でパリジャンを魅了し、ピカソやサティ、コクト ーと交流します。ロシア人は、それまでのパリには存在しなかった感性で、才能を開花させ、狂 騒の時代を彩ります。ル・ムーリスもまた、晩餐会や舞踏会を開催し、演奏会や読書サロンなど 芸術交流の場として、パトロンとアーティストを繋ぐ文化的な役割を担います。

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ル・ムーリスにはロシア人ゲストの様々なエピソードが残されています。19 世紀末、リサイタ ルのためにパリを訪れたチャイコフスキーはピアノソナタ二番とジャンヌ・ダルクを描いたオペ ラ「オルレアンの少女」をホテルの一室で書き上げます。また、トルストイが滞在し、ピカソが 妻オルガと結婚披露宴を開催したのも、このホテルです。ロマノフ王朝時代の芸術家が残した余 韻や息づきを感じられるこの空間こそが、『女王がいた客室』のインスピレーションの元となっ たのです。

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そもそもホテルとは、世界中の人が交錯する劇場的空間。様々な想いを抱えて訪れる顧客達と、 彼らの心の糸を手繰り寄せようとするホテルマンたちの非日常な日常を、藤沢文翁は想像をめぐ らせ、考察したのです。豪華絢爛な内装や、チュイルリー公園の回転木馬、黄金の宝石箱のよう な夜景、、、『女王がいた客室』には、愛され続けているパリの景色と空気が詰まっています。 時代の変化に動じることなく、パリ文化を今も体現し続けている「世界の王侯貴族と芸術家に愛 されるホテル」に、いつか宿泊してみてください。狂騒の時代の香りとロマノフ貴族の高貴さと 憂い、パリ独特のノスタルジーに、記憶の欠片を優しく包む人の暖かさに触れることができるで しょう。時代を超えて滞在した多くの顧客達のように、ここは、必ずもう一度訪れたくなる「願 いが叶うホテル」なのです。